まずは家作りに欠かせない住宅ローンについて少しふれておこうと思う。私たち夫婦は最初から建築士に依頼して家づくりをはじめようと考えていたわけではない。マンションや建売一戸建てもさんざん見て回ったし、ローン申請をだしてみたこともあった。しかし、色んな理由で上手くはいかなかった。
この記事の写真はいろいろ見て来た我が家の候補地のうち、ちょっと気になった4軒です。建物にも土地にもどこかに弱点が。なかなかこれという物件には出会えません。でも、見る目は確実に養えます。買えない物件でも見て回ろう!
自営業に注文住宅のローンは無理ですよ!
自営業はサラリーマンよりも住宅ローンが組みにくいということを不動産屋からも、銀行からも、色んなところで耳にタコができるほど言われた。「頭金も十分にないのに、自営業で、それも注文住宅を建てるなど絶対に無理ですよ。自営業の社長より小さな企業のサラリーマンの方が借り易いというのが業界の定説です。」と断言した不動産屋が言った言葉がこれである。
意外と素直だった私たち夫婦は紹介された建売住宅の住宅ローンをスーパー系の新興銀行にお願いして、却下された。高台で近くにスーパー等もあり、行き慣れたところだったので気に入っていたのだが、まぁ無理だろうと思っていたので、それほどショックではなかった。
しかし、結論としては
こんな私たちでも無理ではなかった。
彼らの言うことをそのまま鵜呑みにして、諦めていたら何も起こらなかった。つくづく自分で物を考えて検証してみることの大切さを思い知らされた。それは、家づくりだけではない筈だ。それではなぜ可能となったか。それを振り返ってみたいと思う。
自営業は老後も働き続けることを前提に法律が考えられているので年金も少ない。ゆえに決して安くはない東京の家賃を老後も負担し続けていくことは容易いことではない。相当な金額を貯金しておかなければ無理だが、このご時世そんな余裕ができる自営業がどれだけいるだろうか。そういうことを考えると私たちも一日も早く家賃生活を脱してマイホームを持った方が良いと思ったが、なにぶん収入に山あり谷ありなのが自営業。経済状態が悪い時は生活するだけで精一杯で、そういう余裕もなかった。
状態が好転していざ家が買える状態になっても、それはそれで、どういう形で家を買うか(建てる)かは全くイメージできずにいた。そこで、とにかくいろんな物件をみて、いろんな人と会い、結果、否が応でもいろいろ考えざるを得なくなった、というのが実際のところだ。
その結果、私たちは「家は簡単に買うものではなく、自分たちで作るもの。」という結論に至った。
次ページ、ちょっと具体的な住宅ローンの話
銀行もいろいろ!住宅ローンもいろいろ!
その勢いで、ローン申請も自分たちで一から調べてまわることにした。今、銀行には住宅ローン相談窓口が設けられている。私たちは銀行から安い金利でお金を借りたい。銀行も返済できると判断した人にはお金を貸したいのだ。後に、土地の契約をお願いした不動産屋さんから「そこまで苦労することはなかったですね。そこは不動産屋に頼まれるケースがほとんどですよ。」と言われた。しかし、私たちはそれで良かったんだと思う。
多くの銀行の窓口に出向き担当者の話を聞いてみたが、色よい返事があるところはまったくなかった。そんな中、良い結果が得られたのは、ここに断られたら一番つらいからと後回しにしていた、主人が20代から一度も変える事なく取引先に振り込んでもらっていたメインバンクだった。最後の砦、断られるなら断りやがれ!とすべてをオープンにする決断で、前年度までの確定申告書とその年の予想値の決算書を持って行きました。それを見た窓口の女性が、「これなら来年申請されるのをお勧めします。」と言われたのです。ローンの審査は何よりも所得額。数字なのだ。そして小さな額であっても取引をしている銀行を作っておく事なのかも。
そうして銀行の住宅ローン相談窓口に何度も通ったことで、良くも悪しくも銀行が考えてることがわかったのでよかったと思う。住宅ローンについては不動産屋まかせにするケースも多いと思うし、会社員の人たちならそれで十分かもしれないが、私たちのような自営業の場合、直接銀行に確かめて見た方がうまくいくことも多い気がする。実際、第三者を介するよりもトラブルも素早く対応でき、スムーズに事が進んだ。
ローンのことはまた別の機会にレポートするが、とにかく結論としては自営業であってもきちんと税金をおさめて一定の収入があり、返済能力があれば住宅ローンは可能なのだ。何しろ申請書に添付するのは納税証明書なのだから。
確かにサラリーマンより基準が厳しくみえる面もあるが、不可能ではない。ただ、節税のため、必要以上に経費を計上して納税額を減らしているような人は当然、借りれる金額も激減するし、確定申告でマイナスになっていると当然住宅ローンは組めなくなるだろう。こういう点が「自営業は借りるのが難しい」と言われてしまう最大の原因になっているのではないだろうか。
失敗が許されない住宅ローン
また、住宅ローンは私たちにとって失敗が許されない金額だったので考えるしかなかった、というのも事実である。よほどの富裕層でない限り、数千万円という金額は大多数の人にとってもそういうものだろう。そのうえ、借りるのが難しい、難しい、と言われ続けた自営業の私たちだからこそ尚更だ。もしも私たちが簡単にお金が借りられる状況で、予算も十分にあったなら、果たして今のような家を建てたかははなはだ疑問だ。
いろんなハードルがあって簡単に事が運ばなかったから、自分たちで考えるしかなかった。その結果、不動産屋が紹介してくれる一戸建てでもなく、大手ハウスメーカーでもなく、自分たちに合う建築士を探して家を建てるのが自分たちには一番あっていると至ったのだ。
次ページ、建築家さんについて書きました。
建築士を通して建てる家はハードルが高いのか?
住宅ローンのめどがついて、次に探したのは建築士。むろん同時並行の時期もあったし、工務店なども見て回った。
私たちも、最初は建築士に依頼して家を建てるのはハードルが高いと思っていた。しかし、果たしてそうなのか、そこからいろいろと調べていった。調べていくと、相当高額な設計料をとる高名な建築家ももちろんいるが、だいたいは建築費の10%、トータルコストが低い場合は15%位を設計料にしている建築士が多いことがわかった。たとえば、2,000万円の物件なら200万円。高い人だと300万円といった感じ。3,000万円の物件なら300万円が設計料。この金額を高いと考えるか、安いと考えるかだ。
私たちはこの金額はかけるべき当然の金額で、むしろ、適正な値段で建築を行なう上でケチってはいけないコストだと考えた。建築士は、建築基準法に基づいて設計をするのみならず、建て主の要望を形にしていく仕事。もちろん、大工さんとの円滑なコミュニケーションも欠かせない人間力が物をいう仕事だと思う。設計だけでなく、正しく建てられているかを確認し、コストの管理もしてくれるのだ。
私たちもこの人だ!という建築家に出会えたその結果、素晴らしい大工さんや左官さんや職人さんにも出会えた。もちろん建て主と建築士も人間同士なので、相性の問題も大きい。この人とうちはうまくいかないと思っても別の人とはうまくいく場合もある。 ようは、自分たちの思いを理解してくれて、この人なら安心、信頼できる、という相性の良い人を探すことが大切なのだ。
最近は、そういう建築士との橋渡しのようなことをしてくれる団体もあり、いくつか話を聞きに行ったこともある。しかし結局私たちはインターネットで自分たちのコンセプトに合いそうな建築士を自分で探し、連絡をとった。お話を聞いた建築士さんの何人かが言っていたが、登録していてもほとんど紹介ってないらしい。出会いはコーディネートしてもらうものではないのかもしれない。
自分たちに合った建築士を探す
今は便利な時代で、建築事務所がホームページを持っていることが大半だ。ホームページをみれば、どういう建築をめざしている人なのかはだいたいは理解できる。たくさん見れば見るほど、目も肥えてくる。実際会うとイメージが違うと思う、ということもたまにはあるがそれも仕方ないことと諦めて、根気よく探すしかない。
我が家は幸いにして5人目ぐらいで「この人なら!この人にぜひお願いしたい!」という人に出会うことができた。その前にお会いした建築士さんも素晴らしい方たちで、お話を少し進めた方もいた。みな志を持っている方々でした。そういう中で、私たちの思いや理想を一番理解して実現してくれそうだと思えたのはストゥディオ・プラナの林美樹さんだったので、土地探しに何ヶ所も同行してもらうところから、打ち合わせが進められていった。建築が終わっても、その時の感触が間違っていなかったことをしみじみ感じている。それもこれも、そこに至るまで何年もかけて色んなことを見たり、調べたり、考えたりしていたからだと思う。
家作りは年月をかけるべし
家作りは、資金が用意できてスタートというわけではないと思う。資金的には今すぐには実現するのは難しいという人でも、色んな物件を見てまわったり、色んな人の話を聞いておくことは決して無駄ではない。主人は独身の頃から一人でぷらっとマンションギャラリーや戸建て住宅を見に行っていたらしい。ふたりでも分譲住宅やマンションギャラリーに行って、担当者の言葉にむっとして喧嘩したり、いろいろありました。どこに行ってもそんなに変わらないね、というのが最後の結論。そのうちに、自分がどういう家に住みたいかもはっきりしてくるだろうし、収集した知識や経験は土地探しにも設計をお願いする段階でもいきてくるというもの。
何事も夢を持って、歩き回り、人と出会う事からがスタートですね。伝統構法と土壁の我が家、この家も新しい出会いと夢へ私たちを運んでくれるでしょう。
次回は、一級建築士 林美樹さんとの実際の面談についてレポートします。