あさりおん

“ゴジラ”はただの怪獣映画ではない

会場の看板。誰じゃカッコいい看板の前に団扇3つ並べたのは!と思いつつ、パチり。

アメリカ版「GODZILLA ゴジラ」のプレミアム試写会へ

レッドカーペットでは、ゴジラの人形や写真集を持った若者はじめ、幅広い年齢層の人たちがたくさん集まり、ギャレス・エドワーズ監督初め、キャストの渡辺謙さんらも拍手喝采で迎えられ、監督には熱心なファンから「ギャレス、サンキュ〜!」という声まで上がっていました。熱烈なゴジラファンからすると、日本のゴジラをハリウッドで製作してくれてありがとう!という気持ちの表れなのでしょうか。

今が旬のモデルや女優を遥かに超えて、謙さんとギャレスに負けず劣らずの拍手で迎えられていたのは、往年の名優、宝田明さん。宝田さんのことを知ってるんだろうか?という年齢の人まで大喜び 。宝田さんご自身がファンの熱狂ぶりに驚いておられたようでした。

宝田さんはゴジラの記念すべき第一作の主演俳優。特設ステージで「初めてポスターの一番右に名前があって、いつも行く居酒屋に早くポスターはりたかった」と話されていたのが印象的でした。ゴジラファンにはとって、やはり特別な敬意を払うべき存在なのでしょう。

地上最強つながりで、オリンピックとなでしこ好きの我が家が応援している、吉田沙保里選手と澤穂希選手が登場、カッコいい女性お二人、もう少し近寄ってほしかったです。

そのあとフィギアスケートの安藤美姫さん。生の美姫ちゃん、目の前まで来てくれて、小顔なのにアップでとても美しかったです。彼女はテレビより生の方がきれいですね。フィギアファンとしてはここで書いておかねば……。

アメリカ版「GODZILLA ゴジラ」

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さて、この新作について。ネタバレにならないように触れておきます。

ギャレス監督は、小さい頃から東宝ゴジラ映画の大ファンで、ゴジラを自分の手で作ってみたいという夢があったそうなのですが、その熱意はゴジラのキャラクターそのものにしっかり出ていました。「どんなに世界中で大ヒットしたとしても、この日本でヒットしなければ夢はかなえられたことにならない。これがゴジラ製作の最終ゴールだ。」と熱く語っておられました。

本作のゴジラは第一作目と比べると小顔でシャープな印象。一作目のゴジラが50メートルに対し、新作では108メートルと倍以上。パワーアップして迫力も満点。生きてるかのように自然に動くゴジラは60年の時代の流れを感じさせます。

そのゴジラがスクリーンに堂々と登場するシーンでは満員の客席から自然に大きな拍手が巻き起こりました。映画の最中にあまり見たことの無い光景です。それ位、日本人にとってゴジラは特別な存在で、自然に感情移入できるヒーローなのですね。

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アメリカ的悪役怪獣

少し残念だったのはゴジラが戦う悪役怪獣。これは、非常にアメリカ的なキャラクター設定で日本人(おそらく中高年)がイメージする怪獣とはずいぶんと違う印象を受けました。まぁ、アメリカが製作したアメリカのゴジラですから、それは仕方ないことです。主人公のゴジラと同じくらい怪獣に人気が出て、子供のおもちゃになる日本の文化とは少し違うのかもしれません。

アメリカでは怪獣はやはりあくまでも悪役で、白黒はっきりさせるものなのかな、と想像しました。日本では、悪役はもちろん悪役ですが、アメリカに比べると少しヒーローとの境界線が曖昧な気がします。映画にはやはり製作した国の考えや文化が如実にあらわれますね。

例えてみれば、水戸黄門の悪役を語る時代劇ファンはいませんよね。でも、鬼平犯科帳の盗賊たちについてはファンは語り合う。怪獣の悲しさが見えてこないとファンとしては物足りなく感じるのです。

注文付けるとすれば、監督、ディテールにもっとこだわって!

この作品、怪獣娯楽映画としてとても良い出来です。1作目へのオマージュから、ギャレス監督がその主張も取り入れて描いているのはとても良かったです。ただ、ディテールのこだわりの無さに「そりゃ無いよぉ!」感を何カ所も感じました。

例えば、放射線や核兵器というリアルなものに対する扱いが少々雑に感じられたこと……。これは、3.11を経験して放射線のことが日常の話題にのぼり、広島・長崎の惨劇を知っている日本人からすると「あれ?そんなもんじゃないよ、放射線は……。米軍の核兵器はもっと恐ろしいぞ!」と感じる人も少なからずいることでしょう。ただ、1954年版もあれ?っと思う個所はあったし、あくまで娯楽映画として評価したいと思います。

それで思い出しました。数年前に公開された超メジャーなあるハリウッド映画では、ネバダで行なわれた水爆実験のまっただなかに放り込まれたヒーローが爆発を避けるために冷蔵庫に入り、爆発が終わると同時に何事もなかったかのように脱出してめでたし、めでたしというシーンがありました。このシーンにはさすがに驚きました。娯楽映画なんだから、という声もあるでしょうが、現実のものを扱うならあまりにも乖離かいりして描くのにやはり違和感を感じてしまいます。

今回の新作ゴジラのギャレス監督も「リアル」を追求した、と強調されてましたから、それならもう少し、ディテールにまでこだわって欲しかった、というのが残念なところです。

それでも、観る人によっても様々な発見があり、感じ方があるのが映画の良さ。昔のゴジラのファンも、そうでない人も、興味のある人はぜひご覧になってください。会場の様子を観ていると10〜30代にはおおむね評判が良さそうでした。

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1954年製作「ゴジラ」を振り返ってみた

さて、せっかくですから、1954年に製作された第一作の「ゴジラ」についても……。

レッドカーペットで喝采を浴びておられた宝田明さんを拝見して、むしょうに第一作目が観たくなりました。そして、試写会から帰宅して早速録画しておいたものを観賞しました。

公開に合わせて、宣伝キャンペーン?いいの?と思わせるタイミングでNHKがゴジラ特集!小さなことは置いといて、タイミング良いありがたい特集です。

娯楽映画に込められた核を使う人類へのメッセージ

その前に「ゴジラ」が生まれた時代背景ですが、まず、このゴジラ製作の年、1954年はまだ終戦後10年足らず。戦争で焼け野原になった傷跡からようやく立ち直ろうとしていた頃、第五福竜丸がビキニ沖のアメリカの水爆実験で被爆するという衝撃的な事件が起こった年でもありました。

劇中でゴジラは「ジュラ紀の恐竜の末裔が、住処の海底の楽園を度重なる水爆実験により破壊され、安住の地を追い出され、度重なる放射線を生き延びたため、生物的進化を遂げて姿を現したものがゴジラである」と説明されています。

ゴジラは身勝手な人間の愚かな行為によって現れ、そしてまた人間の手によって葬り去られてしまいます。

ラストシーンでは、水爆実験への強烈な抗議がストレートな言葉で表明されます。こういうことからも、ゴジラはただの怪獣娯楽映画として作られたのではなく、メッセージ性の高い社会映画としての側面も持っていたといえるでしょう。

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上品な表現の残る名画

怪獣ゴジラそのものの迫力や動きは、やはり最新のアメリカ版に比べると見劣りします。味はありますが、恐怖を覚える程のリアルな感じはしません。場面によっては指人形?感も否めません。それは、私たちが現代に生き、最先端のCGに慣れてしまっているせいでしょう。

それと、メイン キャスト以外の出演者たちの芝居がぎこちなくて棒読みのよう。はっきり言って学芸会のように見えます。今は端役の人であっても演技がきちんとできる人が大半だし、子役に至っては大人以上の演技力のある子も珍しくない時代ですから、かなりの違和感を感じます。まぁ、60年も前の映画ですから、それもやむを得ないことでしょうね。

しかし、昔の俳優さんの上品さと言葉遣いの美しさには注目です。一言で言えばエレガントで大人。精神年齢は確実に昔の人の方が10歳以上大人に思えますし、現代の私たち私たちと同じ日本人とは思えない程の差を感じます。当たり前のことだけど、人間って時代によってこんなにも変遷するものなのだとしみじみ。60年でこれですから、百年、千年だとどうなっているんでしょうね。気が遠くなります。

ハリウッドが生んだ最新作ゴジラと60年前につくられた一作目のゴジラ。莫大な予算をかけて最新特撮技術とCGを駆使したメジャー映画としてのゴジラと、混乱の社会のなか、時代の申し子として必然的に登場したかのようなゴジラ。まったく違うゴジラではありますが、60年という長きにわたって人々の心に存在してきた理由がちゃんとあります。それを映画でぜひ確かめてみてください。

新旧・両作品ともぜひ見てほしい映画の一つです

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