映画「超高速!参勤交代」から時代劇を考えてみた

おすすめ時代劇 [6月22日から公開中]

映画のパンフレットと試写会状で配っていた新聞。面白い内容の新聞だったので、もし映画館で配っていたら、忘れずに!

「超高速!参勤交代」???

この映画のタイトルを初めて見とき、コメディね!と思いましたが、参勤交代がどんなドラマになるんだろ?って興味は湧いてきました。

正直、それほど期待してなかったのです……。

インパクトあるタイトルに斬新なテーマ。時代劇ファンとしては見てみよう思いましたが、正直、それほど期待してませんでした。まぁ当たったら見に行こう!と試写会の応募はがきを投函。こういうのって当たるんですよね!まぁ、はずれ映画でも電車賃だけだから!と夫婦で有楽町へ!豈図あにはからんやってこんなとき使うんですね!これがなかなか。今まで何年も無かったような、よく出来たコメディ時代劇でした。

笑わせる、ほろりと泣かせる。現代的なエンターティメント性を持ちながら、時代劇の形式はきちんと踏んでいますので、厳しい目を持つ時代劇ファンも満足できる出来だと言えます。期待してなかったわりには、とても良い映画でした。最近は、着物来てカツラかぶってるだけのトレンディードラマっぽい時代劇もたくさんありましたから。

ファンの不満がつのる、近年の時代劇

我が家もそうなのですが、時代劇をたくさん観ていて特別な思い入れがある人、時代劇の衰退を心から憂いている人たちが最近の作品を観て気になってしまうのはざっと以下のような点だと思われます。

  1. 若手や昔のトレンド俳優が現代言葉で興ざめする。
  2. 照明が明るすぎて時代劇の雰囲気が出ない。
    蛍光灯がこの時代にあるか!とつっこみたくなる。時代劇マニアになると、撮影所がどこかまで想像がついてしまう)
  3. 主役とヒロインが時代劇の所作が出来てない。
    昔の俳優さんは先輩からひとつひとつ手ほどきされたそうです。
  4. 地方が舞台なのに、全編標準語。これも違和感あり。
    現代ドラマにもいえることですが、私はどうもこれが苦手です。
  5. 脚本が甘く、時代考証がいい加減で、主役だけ目立ち、ストーリーも薄っぺらくなってしまう。
    日本のテレビドラマによくあるパターン。スポットライトがあたるのが主役だけかまわりの数人だけってやはり妙だ。

超高速に基準をクリアしていた!

しかし!こういった不安要素を、この本作品はクリアしているんですよね。少なくとも私にはそう感じられ、久々に感心してしまいました。

言葉はちゃんといわき言葉でしたし(ネイティブな方からすれば多少のおかしさはあるのかもしれませんが……)、現代言葉を話してる人は1人も居なかったです。キャラクターについても、主人公のみならず、他の登場人物も丁寧に描かれていました。キャスティングもぴったりだったんではないでしょうか。

また、感動したのが照明のこと。夜のシーンはちゃんと暗く、行灯の灯りがとても美しかったんです。照明さんなど、裏方の技量が如実にあらわれるのも時代劇。細かいこだわりが画面からも感じられて、とても嬉しく思いました。アクションシーンが多いからか、ちょっとワイヤー使いすぎ?と思う場面もありましたが、まぁ、忍者も登場することだし、若い観客はそっちの方がよいかもしれないし、そこは我慢、我慢。忍者好き欧米では逆に大喜びしてくれるかもしれませんしね。早く海外へ配給されることを願っています。学生は試験の前に見ると参勤交代ってこういうこと練って勉強になるし、外国人もよく分かるように描かれています。本作品で描かれた笑いは万国共通のものです。

特に照明や演出はとても上品です。クライマックスの数カ所の立ち回りの殺陣シーンでは黒沢映画の照明を彷彿する光の使い方で、コメディなのを忘れさせてしまう迫力です。

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