【本漆喰硬押えの妻壁】の中塗り

【伝統建築現場レポート】本漆喰の妻壁③ 2014年5月29日


丁寧な中塗りの砂漆喰

一般的な外壁によく使われているモルタルの下地と上塗りの本漆喰は接着力が弱いそうです。そのため、漆喰に砂を入れた砂漆喰をモルタルの上に塗って、中塗りとします。モルタルと本漆喰の間を取り持ってくれる優しい友達みたいですね。上塗りはその上にもう一度塗ります。 この砂漆喰と上塗りの本漆喰、普通の現場では工場で調合された市販品を使うことが最近はほとんどのようですが、左官の江原親方はすべて現場で調合。伝統の技でこの壁を仕上げてくださっています。次回、本塗りと数日後の乾いた妻壁の画像をアップします。 その前に、隠れてしまう中塗りの工程をぜひ見てください。

下地のモルタルを塗っている頃と思って出かけて行ったら、すでに中塗りのほとんどが終わっていました。乾く時間も頭に入れての作業のためか、左官さんの作業はとても早いんです。
上の写真で、壁の下にはえてる細い棒をアップしてみました。下地作りの頃から、この横棒は何に使うんだろう?って悩んでて、前に「下に材料が落ちないためですか?」って間抜けな質問をしてました。やっと分かりました、正面を塗る基準の定規を細い棒で下から支えるのに使ったんですね。
定規を支える細い棒の下をアップしてみると意外と大胆に細い木がつめてありました。上の定規をしっかり押えるですかね?
砂漆喰を中塗りしています。いつものように左官さんの手ぬぐいおしゃれですね。
中塗りだからと、おおざっぱに塗るなんてことはしません。凸凹がないようにここでも大きな鏝を使って、何度も確認しながら均していきます。
乾いて定規を取り払ったら、きれいな層に。妻壁の後ろに小さなくぼみが出来上がってます。このくぼみを作るために妻壁の下に垂れ下がっているのが、尾垂れです。雨が壁の中に入り込まないように、尾垂れの下に壁板を挟み込む構造です。都倉棟梁の仕事で水に濡れる部分はこうした工夫がしてあります。

この仕事にかかる前、江原さんが「妻壁の漆喰の中に壁板を挟み込むように作るんです。棟梁は面倒な仕事を平気で指示するから大変だ」と面倒くさいけど面白い仕事を楽しそうに話してくれました。

我が家がやってるデザインの仕事でも面倒な仕事を依頼されるとちょっと張り切ってしまいます。面倒なことだからこそやってやるって気になるんですよね。それと同じように江原さんがとてもうれしそうに話していたのが印象的です。

面倒くさい作業の証拠写真。 左から、尾垂れの内側に塗ったモルタル、少し広いのが最初に塗った下辺のモルタル、濃い部分が正面のモルタル、そしていま塗ったばかりの砂漆喰とここから見ると4層に。このあとこの上に砂漆喰が塗られ、内側にもう一層砂漆喰を塗って、中塗り終了です。 この左側の板の部分に壁板を挟みます。
左官仕事は、一つの面が終わると定規を付け替えて次の面を塗っていきます。ここでは半人足を使って、下辺の中塗りの定規を設置しています。この定規の設置が出来上がりを左右するので、大切な手順です。
家の反対まで真っ直ぐに半人足で挟んで設置された定規。江原親方が最終確認中です。
下塗りでは最初に塗った尾垂れの下辺、砂漆喰は逆順?鏝の作業はこればかりレポートすることになってしまってますね。
中塗りに使った砂漆喰。漆喰の中に砂を配合。現場でこれも調合しています。
小さな鏝で砂漆喰を盛ったあと、大きな鏝に持ち替えてきれいにならしていきます。でも、動きがないからちょっと分かり難いですかね?左官の業って、やはり映像の方が分かりやすいですね。次のページにYouTube映像を掲載しています。見てくださいね。
塗り終わった砂漆喰、本漆喰で隠れてしまうのですが、これはこれで味があります。

次ページでは、左官作業の様子を映像で紹介しています。