あさりおん

子犬でなくても大切な家族になれる

僕、ずっとここにいていいの?家族になってくれる?

ペットショップやしつけ本などでは、犬は仔犬の時から飼いましょう。大人になってからでは家族になつきません。と言われたりしますね。

私も昔、犬は小さい時から飼って躾しつけをしないとなつかない、と思っていました。父もそう言ってたし、そういうもんだと思っていたものです。だから我が家で飼ってた犬は1匹をのぞいては、いつも2〜3ヶ月の時にもらったり、買ったりしていました。

確かに産まれてすぐの赤ちゃん犬はとても可愛くて、その時代を一緒に過ごすのは家族にとっても素敵なひと時です。しかし、赤ちゃん犬にとってはお母さんと過ごす大切な時期でもあるのです。母乳で育つことは人にも犬にもとても大切なことです。

今ではあさりおんのカンバン犬になったまるが、ある日、我が家にやってきました。新しいまるとの生活の中で、大人になった犬でも家族の一員になれると知りました。

まる、ひとりぼっちになる!

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お父さん、いない! 僕、これからどうなるのかなぁ?

まるは兄嫁のお父さんが飼っていた犬でした。飼い主さんが長年の闘病生活から退院し、やっとこれからまると一緒に安心して暮らせるという矢先、突然の交通事故でおじさんは亡くなりました。まる1匹だけが残されてしまいました。家族でなんとか飼えないかと相談しましたが、近くに住んでる兄嫁の妹のアッコちゃんの家にはすでに4匹の犬がいて病犬も抱えていました。兄嫁は犬が少し苦手でまるは可愛いけど……。それで、まるが住んでいた家の近所の人にも声をかけたのですけれど、まるを飼えるという人はついに現れませんでした。

まる、新しい飼い主の元へ

久しぶりのシャワー! この人、なんだか優しい!

おじさんが亡くなって、お葬式の準備でまるの家に。最初に会った時から、まるは私達夫婦になついて近寄ってきました。そっと撫でてやると喜び、手を止めるともっと撫でてくれと鼻で手をつついてせがむのです。おじさんは入退院を繰り返して留守番をすることが多かったので、寂しくてたまらなかったのでしょう。撫でられることがこんなに好きな犬に私ははじめて出会いました。

今でも、私たちが椅子でボーとしてるといつの間にか手元にいて手を鼻でつついてくるのです。「撫でてよぉ!」って。

ハウス付きでやってきたまる。ここ、僕の新しいお家?

まるの新しい飼い主を色々探してもまるの引き取り手がいないので次はインターネットで募集をかけるしかないかと話していた頃、我が家の大家さんあっさり犬OK!我が家で引き取ることにしました。おじさんの入院中 もずっとまるの世話をし続けてきたアッコちゃんはとても喜びました。

主人とアッコちゃんは本当の兄妹みたいに仲の良いおつきあいなので、私達がまるをひきとったら、まるの様子をときどき知る事ができるし、会う事もできる。父親がかわいがっていた犬だから娘としては、知らない人よりは安心できると、とても喜んで、飼い主が見つかるまでのまる用にとアッコちゃんが買ったケージ付きでまるは我が家にやって来ました。

次ページでは、新しい家のまるの暮らし

まる5歳、新しい家と家族

ここどこ?
僕どこにつれてこられたの?

そんな感じで我が家にやってきたまる。ケージからなかなか出なく、出ても、床には入っちゃダメだと思って玄関の土間のところに座ったまま上がろうとしません。「どうぞ、お入り」と抱えてやっと我が家へ。最初の2週間は少しとまどっていたようですが、2週間をこえたあたりから、すっかり新しい環境になじんできました。餌をあげる私の後をつねに着いてまわり、家にいる時は片時もそばを離れようとしません。私と夫が口喧嘩をしていると間に入って吠えながら仲裁します。夫は凶暴な平和主義者!と笑っています。
犬を家の中で飼うのは初めてだったので驚いたのですが、犬は、人間が命令をしなくても、日常生活の中から次に自分がすべきことを自分で判断して行動できるのです。最初の頃、私たちが寝る時には、まるにもゲージに入って寝るように『ハウス!』と命令し、まるはそれに従って入っていました。しばらくすると私達が「そろそろ寝ようか。」と二人で話しているとその会話を聞いて、自らハウスするようになりました。そしてまたしばらくすると、私がパジャマに着替えはじめるとその行動をみて、ハウスするようになったのです。これはほんの一例です。

まる5歳、新しい家と家族

まるは『だいたい5歳くらいかな。はっきりわからないんだけど……』って言われて我が家に来ました。すっかり大人になってから我がにやって来たのです。しかしそれからでも、まるはいろんなことを吸収して覚えていきました。しかも勝手に人間の話しを聞き、理解する言葉も増えて行き、新たな発見があるたびに私たち夫婦には笑顔がおこりました。子犬でなければ、ということは人間の単なる思い込みと幻想でしかない、ということをまるは教えてくれたのです。

ペットショップでは小さければ小さい程高い値段がつき、売れ残ったらもう途端に価値は下がります。しかし、犬はいくつになっても、新しい居場所をみつけられるものだということをまるに教えられたのです。

次ページへ。「新しい家族を待つ犬・猫たち

愛護センターで死を待つ犬・猫たち

様々な理由で飼えなくなった犬たちは「○○愛護センター」という何とも皮肉な名の場所に持ち込まれます。ブリーダーや飼い主に捨てられた犬猫達がそこに集められ、施設がいっぱいになれば、順に彼らは殺処分されます。もちろん引き取り手は探されるようですが、愛護センターは死を待つ場所でもあるのです。

持ち込まれる理由はさまざまだそうです。子供がアレルギーになった、犬が飼えないところに引っ越した、飽きた、なつかない、吠える、旅行に行くから、病気になった、大きくなって扱えない等など。最もひどいのはブリーダーがこいつは売れないからと持ち込むようです。人間の理由は何とも勝手なものです。

そういう人間達に比べたら、まるの仲間の犬や猫はよほど高尚な次元で生きてるんじゃないかとさえ思います。言葉のボキャボラリーは少なくてもアイコンタクト で気持ちを伝える能力は人間よりよほど発達しているようにも思えます。

まるも思いを伝えている

これからよろしくお願いします!
ずっといていい?

犬は環境にとても順応する生き物です。それなのに、すこしばかり大きくなってしまったから、もうダメだと思うのは何とももったいないです。少し人間が彼らの思いを汲んでやる努力をすれば、彼らはキチンと思いを伝えているのです。

我が家に来て半月ほどの頃、まるはうっかり家の中でウンチをしてしまいました。彼は家ウンチはダメって教えられて育ったので、どうしようかと戸惑っている様子。右手出してウンチをなんとかしよう。でもさわっちゃダメだし、どうしよう!と悩んでいるようでした。それを見た主人はとても愛らしくてあまりきつく叱れなかったそうです。「失敗しました、ごめんなさい」と彼はちゃんと反省していたのです。その後まるは一度も粗相をしたことがないのです偉いでしょ。

もちろん、前の飼い主が良い躾をしていてくれたということもありますが、新しい家族の様子をみていれば、犬たちも気持ちを伝えているのです。

彼らはじっと新しい家族を待ってます

この足、ちょっと気に入ってるの、 いつか、かじっちゃお!

多くの都道府県で『殺処分0』を目指して様々な取組みがなされています。県であったり、NPOであったり、個人であったり、様々なプロジェクトが進められています。愛護センターで処分される動物たちを引き取り保護し、新しい飼い主との出会いをプロデュースする取組みです。

私たちが応援したいとまるがやってきた頃から注目しているプロジェクトを次回「動物愛護団体から家族を迎えるという選択」で紹介します。

主人がまるの小説を書いているのは少しでも大人になったペットと始める新しい暮らしを知って欲しいからと話してました。読んだ人がこういったプロジェクトに興味を持って欲しいねって言ってます。

今日もいつもと変わらず私の横で寝そべっているまるを見つめながら、「まるのような飼い主と離れざるを得なかった犬猫たちが、今日こそ新しい家族と出会えたらいいな」そんなことを願って、私もこの記事を書いています。

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