今日は新しいボクの家の建築現場にたくさんの人が来てくれました。だからお父さん、ぼくがワンワン言うからって、だんだん奥の寒いところにつないでしまったの。震えてたら建築士の林さんとテラちゃん来てくれて、「まるちゃん震えてるよ」ってお父さんに……。「いつも震えてるから大丈夫です!」ってお父さん、あまりにも酷くない?まぁ、このくらいは大丈夫だけど、寒いんだから、ちっとは気にしてよ。
お屋根の工事をしてくれるおじさん、ボクのこととってもかわいがってくれてたから、ぼくいい子にしてたのに。棟梁にちょっとワンワンって言ってしまったら、奥の方に連れて行かれてしまった。お父さんて、結構意地悪でしょ。
朝からみんな忙しく働いてました。
みなさん朝から作業されていて、「屋根の工事のおじさんは、今朝、屋根をふくガルバリウム鋼板というのを運んできてくれたんだよ」ってお父さん。ガウムリバル?ってなに?屋根の上まで連れて行ってくれたこと無いよ。ぼくにはよく分からないけど銀黒って瓦の色の屋根にするんだって。ボクの小屋には屋根無いんだろうなぁ!
それから、現場の責任者の良治お兄ちゃんが、何か作ってるから、お父さんがこれは?って聞いたら、それはベランダの柵のところに取り付ける柱なんだって。一本の木から削りだして、太いところと細いところがあって、柵の手すりが通るほぞ穴もあいてるの。絶対お父さん、ここからボクがのぞいてる写真撮ると思う!
それから、土壁の左官の江原さんも来てたよ。江原さん朝のうちに来て、小舞壁を1カ所仕上げてくれてたよ。2時間でやったんだって。すごいなぁ、お父さんとお母さんはいっつも同じ大きさを一日掛けてやるんだから、えらい違いだね。もっとお父さん修行しなさい!竹小舞編みに壁土を塗って、土壁って出来るんだって。
そんなこと思ってたら、ぼくのいるところをおじさんたちがたくさん通っていくの。何してるのかなぁ?って思ったら、お風呂の工事の相談。お風呂は水のかかる部分の壁はブロックで作るらしいんだけど、そのブロックをどう作るのか、水道の工事はどうやるのか、江原さんと棟梁と水道屋さんが相談してた。お風呂嫌いのぼくもお風呂好きになれるようなすてきなところにしてね。
いろんな相談をお父さんも交えてしてたけど、一番お父さんが頑張ってたのは電気のことだったみたい。お父さんのお仕事はたくさんのマックを使うから、書斎の電気回線は三系統なんだって。ボクんちの半分以上のコンセントが書斎にあるようになるらしい。ネットとテレビがないと生きていけないお父さんは、ダイニングにもそれをつけてもらいたくて、頑張ってたけど、テラちゃん考えてみますって言ってくれたから、ほっとしてたみたい。
そんなことをしてたら、いつの間にかお母さんが建築現場にテーブルセッティングして、たこ焼きの準備を始めたよ。キッチンで美味しいニオイが朝からしてたのはこのためだったのね!ボクの大好きな唐揚げのニオイが……。頂戴頂戴!って言ってもまだくれないよね。ふん!
上棟式がはじまりました
お父さんがお米を持って、お母さんがお塩、この現場の責任者の良治さんがお酒を持って、『いの一番』の柱のところから、家の四隅にお清め。お酒、お米、お塩の順で、3回ずつ撒いていきました。
これはぜひやりたいと棟梁に相談された時、クリスチャンのお父さんは思い出したことあるんだって。お父さんたちが学校で習ったザビエルさんのキリスト教伝来よりもっともっと昔にキリスト教は伝えられてて、聖徳太子さんよりもずっと前からクリスチャンが日本に住んでいたらしいんだって。
その風習が日本人の風習の中にとてもたくさん残っていることをキリスト教を日本に伝えたザビエルさんはインドで出会った日本人と話しをして実感したんだと。だから日本にいるクリスチャンたちに会いに行くってローマにお手紙を出してるんですって。だから、家の四隅のお清めにも何かそういうキリスト教的な隠れた意味があるのではないかと、お父さんいろいろ調べてみたんだって。
具体的には何も見つからなかったんだけど、聖書にはやはり地の四隅を守るみ使いのことが黙示録の7章に出てきます。家の四隅をお塩で清めて、アブラハムが三人のみ使いをもてなしたように、お米とお酒を撒く。それも3回。もしかしてと思える儀式だなぁってお父さん。そのことを上棟式のご挨拶でお話ししたんだけど、上手く伝えられなかったってしょげてるから、ボクが代わって説明してあげてるの。ボクって偉いでしょ!犬には無理って思わないでね!
祝!世界が一緒にイースター
お父さんの伴奏で、賛美歌を歌って、上棟式が始まりました。千何百年も前から東方教会と西方教会で別々の日にイースターをしていたのが、今日のイースターは全世界の教会が同じ日にイースターを迎える。その前日に上棟式を持つことが出来たことがとてもお父さんうれしいんだって。イエスさまが新しいお家にもこうしてみなさんと共にいてくださるって喜んでました。
賛美歌とお話しが終わって、乾杯になった時、大工の亀田さん、ボクの大好きな亀ちゃんが「それお清めのお酒?」と祭壇の上のお酒を指差して、コップをみんなに手渡して少しずつ注いでくれたの。まるで聖餐式のように、お清めの日本酒をみんなで分けて飲むのがこうした上棟式の習慣だったことをお父さんその時まで知らなくて、ほんとに聖餐式がこうして伝わってるのかもと実感したんだって。ちょっと涙ぐんでたよ。
日本の教会は日本の習慣を否定することが多いけど、ザビエルさんはローマへの手紙に、日本のお茶会、おもてなしの姿に聖餐式の姿を重ねて報告。静寂と安らぎがあると書いてると聞いたことがあるんだって。当時の日本の教会もそれをもとに宣教師を招いて聖餐式の食事会を持っていたそうですよ。ザビエルさん、古くからの日本のクリスチャンに会えたのかもしれませんね。
ところで、お父さん、こんなに難しい説明、犬のボクにさせるの無理がありません?だから、今度ちゃんとお父さんの言葉で書いてね。それよりボクはもっと話したいことがあるんだから!ボクに子分が出来たんだよ!
子分が出来た!
お食事が始まって、お弁当とお酒とお料理とみなさん楽しそうにしてくれたけど、ボクのこと忘れてお母さんはたこ焼き作り、お父さんはおしゃべりとお弁当にはまってるの。ボクも鶏の唐揚げ食べたいのに!って思ってると、ルイがボクのそばに!
ボク、子ども嫌いなんだよなぁ!ボクと大きさ変わらないくせにリードなしで勝手に走っていったり、走ってきていきなり頭なでたりするから、ボク、子ども嫌いなの!だからルイが寄って来たときに、「ワン!」って叫んでやった。普通の子なら「ママぁ!」って逃げていくから、これが一番子どもの扱いにはいいんだけど、ルイは違った……!
ルイってやつは怖がらなくて、ボクが吠えても動じなくて、寄ってこようとする。だからさらに「ワン!」って言ってやったら、それを見てお父さん。あ、唐揚げ食べたいのね!って勘違い。まぁ、いい勘違いだから、もらうことにした。
ちょっとお父さんがボクにくれたあと、あれ?ルイにやるの?って思ったら、ルイがボクに唐揚げくれるって。まぁ、嫌いな子どもでもくれるって言うんなら、もらっとこ。ありがとね「パク!」。美味しい!……ん?食べてたらルイがボクの横に。なでてくるみたいだから、一飯の恩義、それぐらいはOKしとこ!
なんて思ったのが、後の祭り、なかなかルイがいいやつに思えてきた。悔しいけど、まぁいっか!
食事会はまだまだ続いて、お母さんのたこ焼き、寒い日だったのでみんな喜んで美味しいって食べてくれた。お父さんが作ったプリンもみんなおいしいって。きっと林さん、お母さんが作ったって思ってるよね。お酒も入って、林さん棟梁を歌わそうと頑張ったけど、棟梁歌ってくれなかった。お家が完成したら歌ってね。ボクも聞きたいから。
ところでお父さん、ビールとお酒、少なかったんちゃう?次の時はも少し出してね。亀ちゃんを筆頭に大工さんたちみんな飲もうと電車で来てくれたんだから。
遊歩道の散歩に!
職人さんやプラナのお二人も帰ったあと、お片付けして、ルイのお父さんとお母さんと、ボクたちで裏の川がわに散歩に行ったの。お父さんたちの自慢の風景だからルイたちに見せたかったんだって。お母さんがボクのリード持ってると思ったら、いつの間にかルイがボクのリードを………ラッキー!ルイならボクがどんなに走ってもついて来れるから!楽しい!というより、ルイならボクが引っ張って行けるから、今日からルイはボクの子分にしてやろ!走るぞぉ!
「ルイくん、まるをビシッと引っ張って!道飛び出したら危ないから!」ってボクのお父さん。ルイもお父さんのアドバイス聞いて、ビシッと引っ張ったら、ボクより力強かった!チェッ!これじゃやっぱりボクが子分かなぁ?
ま、子分になるのは悔しいから、ルイとは友達になろ!だから今日から、ボク、ルイじゃなく、「ワン!」と呼ぶからいっぱい遊んでね。子分にしてルイと呼び捨てにするつもりだったのに、まぁ、友達で我慢しておこ!
よろしくね!「ワン!」
基本、このお話しはフィクションですが、今回はノンフィクション、しかも昨日の出来事です。モデルの人の名前をそのまま使っている場合があります。主人公のまるも我が家の飼っている愛犬『まる』がモデルです。ルイくんは作者がお爺ちゃんおばあちゃんから家族ぐるみでおつきあいの一家の息子さん。
テラちゃん、江原さん、亀ちゃん他、実際の我が家の新築工事の職人さん方です。今回は、昨日もたれた上棟式の様子をまるのレポートでお届けしました。ノンフィクションです。
上棟式までの日々の工事レポートも近日公開します。
5月3日に小舞編みワークショップを開催します。ぜひみなさんご参加ください。次回【第五話】まるに弟妹のネコが……もお楽しみに!とても悲しい出来事が……。