山やま地ち育ちの牛で酪農を営んでいるなかほら牧場のことを知ったのはテレビでの特集でした。山地育ち?普通、牛は山や丘で育つもんじゃないの?と思いますよね。でも、いまの牛たちは牛舎の中●だ●け●で育つのが大半なのだそうです。山地育ちの牛たちは草原のような牧場ではなく、山々の森や林の木々の間の下草を食べて育ちます。だから山地育ちなのです。
こうした目で見ると、なかほら牧場は現代の一般的な牧場とは全く違うんです。そんな牧場から生産される牛乳ってどんな味だろうと興味がわいてきて調べてみたら近くのデパートで扱っていることがわかり、早速買いに行ってみました。あいにく牛乳は入荷当日に売り切れていたので、今回はヨーグルトを試してみることにしました。
この牧場、どんな点が一般的な牧場と違うのでしょうか。
自然の営みだけの山地酪農
日本では放牧による酪農は観光牧場を含めて極めて少なく、残りは全て牛舎飼いの酪農ですが、なかほら牧場では一年中、牛を山に放牧して365日屋外で飼育しています。牛は広大な放牧地を一日中歩きながら草を食べ、夕方5時ぐらいになると麓ふもとの牛舎に搾さく乳にゅうのために自然に集まって来て、搾乳が終わるとまた放牧地へとみずから帰って行くというのです。
そして受精も分娩も自然まかせだそうです。これにも驚きました。現代、一般的な酪農では確実に生産性の良い牛を生ませるために人工授精を行うなど、牛のお産では必ず人間の手で行う時代です。しかし、そもそも動物がお産を自分たちでできないとなれば、種は途絶えてしまいます。しかし、このような動物の生態に添った、限りなく自然な形での放牧ならお産も人間の手を借りずにできるんですね。
その結果、この牧場の牛達は本来の寿命とされる15〜20年を全うできるそうです。それとは対照的に、牛舎の中だけで一生のほとんどを過ごし、高カロリーの濃厚飼料 と配合飼料を与えられ、狭い牛舎で育てられる牛達の一般的寿命は6〜7年です。
また、一般の牧場では乳量を増やすために定期的に人間の管理によって人工授精と分娩を効率的に繰り返し、常に搾乳できる牛を作り上げています。搾乳量を最も重視しますから、生まれた子牛を母牛の乳で飼育する訳にもいかず、生まれ て数日で母牛と引き離し哺乳バケツで人工飼育します。
それに対し、なかほら牧場では子牛を産んだ母牛からは、子牛が飲んだ残りだけを搾乳するそうです。全く逆の発想です。そして栄養の詰まった母乳を思う存分飲める子牛は病気にも強く、健康に育つんですね。また、自由に動き回れるから牛舎に詰め込まれるストレスもない。なかほら牧場の牛達は幸せな牛達と言って良いでしょう。
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