夏が来ると僕は朝早く目が覚める。……と言うより暑くて寝てられなくなるのだ。
ケージの中は僕の体温でムワっとしてくる!だって白いフワフワの毛皮を着続ける日々なんですから。なのにお父さんはもったいないからって、散髪屋さんに連れて行ってくれないんだ。だから熱くてしょうがない!夏になるとケージから脱出したくなって目が覚めてしまう。
だのにお父さんは自分たちが寝る時になると決まって僕に「そろそろ寝ますか?」としつこく言う。ある晩、お父さんがお母さんに「そろそろ寝ますか」って言うと、あ、もう寝る時間なんだ!って思って、僕、素直にハウスしてしまったの。それを見てお父さん、こう言うと僕がハウスすると思い込んでしまったから、しょうがないから「そろそろ寝ますか」って言われると、ハウスする事にしている。ちゃんとハウスするまでしつこく言い続けるからしょうがないからなの……。
針金で出来てるからケージって涼しいと思うでしょ。でも窓辺においてあるから外の温度が伝わって来るし、夜型のお母さんが僕が寝られるようにって、布掛けてるからよけい夏は暑いんだ!だから僕は朝早く起きて、ワンワン叫ぶの。叫んでもハウス!って怒られるから、クーンてかわいい声作戦したり、お父さんたちがウトウトした頃、クゥーンって言ったり、いろいろ作戦考えてるんだよ!
お父さんに言うとひがむから言えないんだけど、実は夏は前のうちの方がよかったかも。だって、前の家は僕の小屋は家の外だったから、昼間は日陰で風が吹いて過ごしやすいし、夜も風が吹いて涼しかったんだ。だから、お願いがあります。夏はエアコンつけて寝てくれないかなぁ!ま、そんな事言ってもお父さんには僕の言葉分からないから、今年も暑い夜はワンワン叫んでやる!
夏の想い出
そういえば、家の外の小屋の中で寝てると隣にネコさんたちが潜り込んできて、冬はいいんだけど夏は暑いから、しょうがないから僕は外に出て寝ようと思うんだけど、なんだか落ち着かない。だから僕、小屋の中に頭だけ突っ込んで寝てたんだ。すやすや寝てると、後ろでガタガタ音がするから、何かな?って見上げてみると、ネコさんがお家の引き戸の窓を開けて、中に入っていったんだ。おばあちゃんたち、ネコさんのために毎晩カギ閉めないでいてあげたみたい。僕、しめた!って思って、僕も一緒についていって、冷たくなってる板の間の上で寝るの。夏の板の間って、冷たくて気持ちいいよねぇ!
板の間の隣の部屋でおばあちゃんが眠ってて、すやすや気持ち良さそうな寝息が聞こえてるから、僕も安心して寝てたんだ。この頃、おばあちゃん、具合が良くなくて、時たま入院してて、僕心配してたんだ。おじちゃんとおばあちゃん、僕の事かわいがってくれて、孫のミユが遊びに来たとき、ミユより僕をかわいがってるって怒ってたよ。
ミユのご飯より僕のご飯
ミユが夕方、冷蔵庫の中を見た時、おいしそうなマグロのお刺身があったのに、夜食べようとしたら、もう無かったって怒ってたみたい。実はそのマグロは僕の晩ご飯にお爺さんが買ってくれてたのだから、僕のお口にお爺さんがポンポンって、入れてくれて、とっても美味しく食べました。マグロもエビもお肉も僕大好き!いつもお爺さんが美味しいものをたくさんくれたから、僕美味しいものよく分かるの……。
あ、オムレツも僕大好きですよ。朝ご飯、美味しいよ。ちゃんと言っておかないと、今のお父さんひがむから……。
ミユはそれを聞いて、孫よりも犬コロの方が大事なんだって愕然としたっていってたけど、額然ってどういう意味?犬の僕には難しすぎて分かりません。でも、ミユも僕の事かわいがってくれて、上海から遊びにくると、散歩に連れて行ってくれた。
おばあちゃんのしつけ
それから、おばあちゃんとアッコちゃんは僕の事、ちゃんとしつけてくれたの。だから僕はお家の中でおしっこやうんちはしちゃだめって知ってるんだよ。それは、おばあちゃんが「ダメ」ってことをちゃんと分かるように僕をしかってくれたからなんだ。僕が悪い事をした時は木の棒で床を叩いて、大きな声で「ダメ」って。だから、僕怖くて「ダメ」って言葉は僕が悪い事したんだって分かるようになりました。棒でたたいたのは床だから、怖いけど痛くないんだよ。
だから、僕は「ダメ」がよく分かります。今のお父さんとお母さんはお家の中はどこでも歩いてていいってしてくれてます。ただ、キッチンとベットの上は上がっちゃダメって最初の日に言われました。僕がキッチンに入ろうとしたときに「ダメ!」って、ベッドの上に上がろうとした時はお父さんに「ダメ!」って突き落とされました。ちゃんと僕が怪我しないようにだけどね。おばあちゃんよりお父さんの方が怖いかも!
それ以来、僕はキッチンとベッドの上に乗りません。それどころか、キッチンに知らない人が入ろうとしたり、お母さんが洗濯物干そうとベッドの上に乗ってる時は、ダメ!ってちゃんとしかります。えらいでしょ!
基本、このお話しはフィクションです。モデルの人の名前をそのまま使っている場合があります。主人公のまるも我が家の飼っている愛犬『まる』がモデルです。ミユは作者の姪です。
まるはきちんとしつけがされていたので、新しい家族になれるのが楽でした。アッコちゃんが相談相手になってくれたのも助かりました。殺処分にされかけた犬猫を助ける保護団体では犬の性格を見極めて新しい飼い主に紹介しているので、我が家のような犬を飼うのが初めての飼い主はしつけがきちんとされている犬を紹介してもらいましょう。また、困ったときには相談にも乗ってもらえるところというのも大切です。まるのおかげで犬を飼う事を学べたので、もしまるの相棒をもらう事があったら、少しわがままな子にチャレンジしようかなと思っています。まるも、後輩を指導してくれるかな?
次回【第四話】今日は上棟式!ボクに子分ができた!です。先日行なわれた上棟式のレポートをかねて、番外編です。もお楽しみに!