10匹のネコと散歩
僕は小さい頃、十匹の猫とおじいさんと川の土手を散歩するのが日課でした。
毎日おじいさんと僕の散歩に行くと、猫さんたちも一緒について来て、11匹と一人で土手を歩いているのは近所のちょっとした名物だったらしい。僕は草っ原を歩くのが大好きだし、猫さん達も大好きだから、僕にしては普通のことなんだけど、僕とおじいさんが散歩してると後ろをぞろぞろ猫さんたちも一緒に歩いているのだから、それは人間にとってとても不思議な光景だったんだって。
僕、『まる』
僕、『まる』って言います。カタカナでマルでもいいんだけど、僕としてはひらがなの『まる』で発音してほしいなぁ。やわらかい感じがいいでしょ?
僕に『まる』って名付けたのは、今のお家のそばの小さくて短い川の東側のちょっと大きな川をずーっと海の方に僕のちっちゃい4つの足だと、朝歩き出して、お昼ご飯には間に合うかな?って所に住んでたおじいさんとおばあさん、それからアッコちゃん。初めて僕がそこのお家にもらわれて行ったとき、三人は一目見てマルチーズだと思って、『マル』って名付けたんだけど、僕をもらって来てくれたアッコちゃんの旦那さんから、ヨークシャテリアとチワワのミックスだよってみんな聞かされて、それから僕は『まる』と呼ばれるようになったんだ。
僕って何者?
おばあちゃんは何頭ものボクサーを飼っていたほど犬のこと詳しい人なのに、それでも僕をマルチーズと間違えたらしい。今でも僕、道で歩いてると『あらかわいいマルちゃん』って勝手に僕のこと『マル』っておばさん言うし、お医者さんもトリマーさんも「マルチーズですね」って言う。それぐらい僕はマルチーズって言う犬にそっくりらしいんだけど、僕あんなに鼻ぺちゃじゃないし、ミックスだから少し大きいし、それに何よりお風呂はいるとチワワ顔なんだぞぉ。ま、かわいいって言ってくれるから、いいんだけどね。だから僕はひらがなの『まる』がいいんです。
僕は10匹の猫たちと一緒に大きくなりました。猫のお姉さん、お兄さんたちと一緒に暮らしてたんです。だから僕は犬より猫の方が好き。というか、僕ほんとは猫?犬?どっちなの?自分では猫かもって思うけど、みんな白くてかわいいワンちゃん。て呼ぶから、犬なのかなぁ?犬でも猫でも僕としてはどっちでもかまわないんだけどな。
ご飯はネコさんたちと
ただ、僕だけは家の土間に紐に結ばれてて、猫さんたちは自由に歩けたのはちょっと不満だったんだ。だって僕のご飯は猫さんたち頂戴ってよって来て、僕のお皿にとりにくるけど、僕は猫さんたちのご飯もらいに行けないんだもん。でも、アッコちゃんとおじさん、僕の分は多めにくれるから、僕お腹いっぱいのときは猫さんたちが食べても怒らなかったんだ。お腹すいてるときに頂戴って言われるのは腹立つからワン!って怒ったけどね。機嫌がいいときは猫さんたちと一緒にお皿に頭突っ込んでガシガシがんばって食べたよ。
僕、みんなと遊ぶの好きだから、アッコちゃんやおじいさんに遊ぼうよぉ!って催促するんだけど、どんなにワンワン言っても、二人は忙しいからそんなに遊んでくれないんだ。そんな時は見かねて猫さんたちがよって来てくれて、いっぱい遊んだんだ。じゃれてけんかしたり、おもちゃの取り合いしたり、いっぱい遊んだんだよ。
一いっ緒しょに遊ぼ!
そういえば、僕に壁の上に登るのを教えてくれたのは、猫さんたち。猫さんたちほどは今でも飛べないけど、僕も台の上や壁の上に飛び乗るの上手だよ。今の家じゃお父さんがめちゃくちゃ怒るからベッドの上や机の上には登らないけど、ほんとは簡単に登れるよ。
ネズミのような小さなおもちゃも大好き。僕、小さなおもちゃで遊びたくなったら、お父さんのところに行って、遊ぼって言うと、意外と分かってくれて、おもちゃの取り合いやってくれます。ポーンと投げてくれて、僕がとってくると、真剣に取り合いしてくれる。でも、これ体力使うから、僕はすぐに飽きるんだ。飽きるとプイッとするとこなんかも、猫さんたちと大きくなったせいかなぁ?ごめんなさい。猫さんたち、今どうしてるのかなぁ?
僕がどうしてこの家に来ることになったかはちょっと悲しい思い出なのでまたいつか描くね。今日はごめんなさい。
そそ、道でネコさんたちがけんかしてると今でも注意するんだよ。ワン!って。それを見てお父さん、『凶暴な平和主義者』だって。失礼だよね。お父さんとお母さんが夫婦喧嘩してても、牙出して注意するんだから、僕って偉いでしょ!
基本、このお話しはフィクションです。モデルの人の名前をそのまま使っている場合があります。主人公のまるも我が家の飼っている愛犬『まる』がモデルです。アッコちゃんはまるの前の飼い主の娘の愛称です。
ジャンプのスローモーション映像も見てね!
次回【第三話】夏は暑くて嫌いです。お楽しみに!