季節限定、吉野山の“さくら巻”
毎年さくらを見るとこのお菓子を食べたくなる。友人の実家の、奈良の吉野山のお土産屋さんがお花見のときにだけ販売する知る人ぞ知るお土産です。
“さくら巻”はさくらの季節限定のお餅のようなお菓子です。ほんとに素朴でやさしい味。何度かいただいたのですが、お餅というよりわらび餅に近く、わらび餅よりもしっかりとした食感。葛に近いでしょうか。甘さも強すぎずほんのりと丁度良い頃合いです。その味が忘れられなくて、桜の季節になると無性に食べたくなるのです。
あく巻の製法は、竹皮に包んだもち米をカシ、サクラ、クヌギなどの木から採ったアク汁で煮込むという実に手の込んだユニークなものです。保存食として作られたのが豊臣秀吉の時代にさかのぼると言われています。こちらのお店では、先々代の店主が桜の木(役目を終えた桜の木)の灰を使って作ったのが始まりだそうですが、吉野山でさくらのあく巻はそのお店一軒しか作っていません。ホームページを作って大々的に販売しているわけでもなく、どこかに卸して売ってもらっているわけでもなく、桜でにぎわう季節のみ限定で、友人のお母さんがご家族総出で製造し、吉野山の店で販売するというやり方です。
最近は、全国からの問い合わせがあれば宅急便で対応されているようですが、それでも、食べたいと思ってから手元に届くまでには数日はかかります。簡単には手に入りません。だからこそ、年に一度、この季節には無性に食べたくなる。そこにわざわざ行ってでも食べたくなる。お土産としての価値があるのです。本来のお土産とはこうあってもらいたいですね。
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