江戸時代、今の時代より士農工商と身分制度があり、自由が無く、支配階級の武士に押さえつけられいつ手打ちにあうか分からない恐怖社会。そこまでいくと言い過ぎだが、学校で習うことだけだと今よりいい社会であったと言うイメージは無いでしょう。しかし、実態はどうだったのだろう?最近、いろんな江戸本が発行されてますが、御三卿の一つである田安徳川家(徳川吉宗の次男の家系)の十一代当主による本著はやはり説得力が違います。著者は徳川家の血筋ではありますが、石川島播磨重工業 に長年勤務されていた筋金入りのビジネスマンだった人なのでビジネスマンらしい見方も随所織り交ぜながらしっかりと江戸時代を考察しています。
自由闊達な江戸文化と現代へ引き継いだもの
江戸がユニークで自由闊達な時代であったことを説得力ある文章と実例をあげて教えており、私達は今の時代が進化の結果であると思いがちだけれども実は失ったものが多く、昔の方が豊かで自由な面も多かったことがわかります。また、江戸時代といえば侍が世の中を牽引していたイメージを抱きがちですが、実のところ庶民にとってとても自由な風紀で、独自の文化を開花させていたことも紹介されています。
日本が近代都市へとスムーズに移行できた理由の一つとして、江戸の庶民の識字率の高さと計算力の高さがあったことは有名な話ですが、江戸は当時、世界でも例をみない庶民の都市であったこと、和算のおかげで庶民の計算力は世界最高レベルにあったことなども興味深いエピソードとともに紹介されていて非常に面白い。私達は決して、江戸を馬鹿にしてはいけないどころか、色々と学ばねばいけないことの方が多いですね。
徳川家の当主ならではの視点で吉宗さんのエピソードなども紹介されていますし、一気に読んでしまいました。元々時代劇好きで江戸には少なからずの愛着を抱いていましたが、ますます、江戸が好きになりました。江戸ってどんな時代だったの?という人から、すでに江戸マニアの人まで楽しめる内容でおススメです。
講談社α文庫『江戸は世界最高の知的社会』
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