あさりおん

土壁と伝統構法の住宅を建てる!

一本の木のように美しくつながった仕口

一本の木のように美しくつながった仕口

私たち夫婦が家探しをはじめた頃は、普通のマンションを見て回っていました。しかし自分たちがそこに住んでる姿を想像すると似合わないなぁって思ったり、地面からはなれるの嫌だなぁ、新築のニオイもなんだか嫌だなぁ!ってことから、次に見て回ったのは、都心の三階建ての建て売り住宅。
マンションのモデルルームにも増して、不快なニオイが多いことが気にかかり、化学物質過敏症やホルムアルデヒドの問題を知りました。
現代の住宅は自然素材ではなく、ほぼすべての建材が工場で作られ、製造過程や工事の段階で多くの接着剤が使われ、そのために化学物質過敏症が蔓延し、多くの人が健康被害で苦しんでいるのです。
それからも、多くの無垢材の建て売り住宅を見て回ったり、いろいろな工務店を回りましたが、不思議なことに、家すべてを無垢材など自然な素材で建てているところは都心部や近郊地域には見つからなかったのです。
それならばと自分の家を「自然の素材で建てよう、昔ながらの家にしよう!」と考えるようになり出会ったのがスタジオプラナの林さんと町家大工都倉の都倉棟梁なのです。

買えなかった建て売り住宅

話しは少しそれるが、この文章を書いていたらたまたま、最初に買おうとした建て売り住宅のS不動産から電話が……。「すみません。もう別の所で買ったんですよ」と話したところ、どこで買ったんですか?どんな所ですか?と聞かれたが「個人情報ですから」とお断りさせていただきました。
普通なら相手からここでガチャンかと思うが、この営業マンさん、なかなか頑張る人で、しょうがないので最後にはこちらから「電話、切らせていただきますね」とまで言うはめになってしまった。3年もなしのつぶてだったのだから、買っていても当然だと思うのだが……。しかもこちらの財務状況を聞いて銀行さえも通さずに断ったのは向こう、勝手なものである。

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買おうとしたけど、買えなかった建て売り住宅

このS不動産に断られたあと、他の物件でもA銀行に断られ、取引先のM銀行に相談した所、我が家の当時の財政ではあと一年後にした方が買えそうだと言われ、腹を据えて家について本を読み、夫婦で考える事にしました。それがよかったのか悪かったのか、ついには家は買うものではなく、建てる方がいい!木と土と竹の自然素材を使った環境と人に優しい、昔ながらの技術を大切にした家が私たちの暮らしに必要なのだ考えるようになりました。

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木と土と竹の家、伝統建築の家を建てる理由(わ け)

こういった経緯から、私たちが学んだ、もう一つの理由をお話しします。いまの日本の森には膨大な量の木々が家になる大きさまで育っているのに、木材として利用されずにいます。それどころか放置された杉や檜の単一林が荒廃し、森が荒れ果てているのが現状なのです。枝打ちがきちんとされなければ、節の多いひょろひょろの木になり、価値が下がります。
また保水力を失うため、山に降った雨をためる力が弱くなる。その結果、毎夏にどこかで起こるのが山崩れ、鉄砲水、土砂崩れ、大水害なのです。それなのに価格が安いというだけで日本の気候に合わない外国の木を大量に輸入、加工した木材で今の日本の多くの住宅が建てられています。
日本で育った木は日本の気候が合い、そこに住む菌や気候にも強い。しかし外国で育った木は気候に合わない。だからシロアリに弱く、それを補うために薬品が使われ、その影響でアトピーや化学物質過敏症も多発している。
弱い木だから住宅の寿命が短くなり、森が荒れて命の危険を感じた杉や檜は次の命を育てようと花粉を大量に空に放ち花粉症が蔓延しているのです。日本の森はこのように多くの問題を抱えているのです。

地球の8割の原生林は人間が破壊した

奥津温泉

森が抱える問題はこれだけではありません。
その住宅用途と合わせて、私たちが普段使っているコピー用紙などの日常的に使われているさまざまな紙のためにも熱帯雨林の天然林が伐採され、ある場所はそのまま放置、よくても単一種の経済林として生物多様性のほとんどない森の変えられているのです。その事は『暮らしの中で出来る環境保護』でも少し触れさせてもらっています。

ある研究では有史以来、人間が破壊した原生林は人類が文明を築く以前の8割に及ぶと考えられるそうです。もちろん、その後植樹した森もありますが、多くは生物多様性が失われ、希少生物が失われていっているのです。
それは近い将来私たち人類をも破滅に向かわせるスピードを持ってきていると考えられます。日本を含めある地域では森が放置され、荒れ果て、他の地域では森自体を破壊。この現状を今こそ変えなければならないのです。
小さなことですが、一つの提案は、私たちが住宅用の木材に日本の無垢材(む く ざい)を使うと、日本と海外の森を守る事が出来るということです。そう考え、少し頑張って(というより木材の費用じたいは国産にしてもそんなにはベラボーには上がらないようです)、身近にある国産無垢材を使う事にしました。

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千年の歴史と江戸の職人が磨いた技を世界のために

ふたつ目の理由は、日本の森には杣人(そま びと)と呼ばれる森を守る人々が少数ですが、いまも現役で働いています。日本の木を知り、地震に耐え、心地よく、人にも環境にも優しい家を建てる大工さんも少数ですが頑張ってます。土を知り絵画のような美しい壁を造る左官さんもいます。
他にも共に家造りに励む様々な職人さんたちがいます。奈良東大寺の昔から連綿とつながる技術の歴史がいまもあるのです。さらには農薬を使った土や藁ではよい壁土が造れないので、土や藁を造る農家も自然農法の方でなければならないのです。
つまり、日本には地球を守る力を持った人々が今もたくさんいるのです。自然農法の農家、伝統構法の大工、左官、職人、これらの人々が豊かにその力を発揮できるように、私たち消費者も何が自分たちに必要で、何が自分たちに出来ることなのかを見つめ直す時が来ていると考えます。
大げさに感じるかもしれませんが、本当にこれらの技術には世界の森を守り、人々を豊かにする希望があると考えます。私たちの暮らしから見つめ直してみる必要があるのです。

次回は②は「江戸時代の森との共生システムが日本を救う」を掲載します。お楽しみに!
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