夏の風物詩、怪談噺。ぞっとする日本の怖さ。
出し物は、時期が夏ということもあり、怪談がテーマでした。
三遊亭圓朝さん
噺家さんは歌丸さん含めて3人。1人目は林家正雀さんの「牡丹燈記」。これは、中国明代の小説を基に、三遊亭圓朝によって落語の演目として創作された怪談噺だそうです。恥ずかしながら、私は、「牡丹灯籠」は映画とかドラマとかしか観た事なかったので、日本のお話だと思ってましたが、中国のお話だったのですね。
クーラーも何もない江戸時代、落語家の怪談噺を聞いて、一瞬でも背筋がぞっとする恐怖を味わい、気分的に涼しさを味わう。何とも粋な納涼だったと思います。
入船亭扇遊さん
2人目の落語は、入船亭扇遊さんの「不動坊」。これは、有名な古典落語の一つだそうで、一緒に行った夫は知っている噺でした。怪談ではなく、コメディ。さえない男が、美人で有名な未亡人と見合いをすると知った長屋の男達がやっかんで、未亡人の亡き夫の幽霊のふりをして男に結婚をあきらめさせようとする……というドタバタ喜劇です。
扇遊さんはさすがにベテランの落語家だけあって、絶妙のテンポと間。何人も登場する人物が皆それぞれ違った個性を持っていきいきと語られ、爆笑しました。いやぁ〜、ほんとに楽しかったです。
桂歌丸師匠の「江島屋怪談」
そしてトリはいよいよ桂歌丸さんの「江島屋怪談」。これは、正当派怪談噺。ネタバレすると面白くないので触れないでおきますが、いやぁ〜、怖かったです。じっとりとして、日本の怪談の怖さが伝わってきました。話芸でこれを表現するってすごいですね。一龍斎貞水さんは怪談落語で有名ですが、歌丸さんの落語も相当怖いです。
歌丸さんにまるで幽霊が乗り移ったかのように、人間の恨みや怨念や情念が語られていく。落語の初心者が言うのも僭越ですが、歌丸さんの扮する老婆はほんとに恐ろしい老婆。若者はエネルギーみなぎるような若者。中年には人生の渋さのようなものが感じられ、それが演じ分けられて行く。ほんとにすごいなぁ〜と関心すること仕切り。
私のような素人が聞いても、円熟した落語家と「開口一番」として登場する若手の落語にはものすごい差があることがはっきりしています。まぁ、どんな落語家も最初は前座を経験して芸を身に付けて行くものでしょうけどね。
そんなことをつぶやいてたら隣りで夫が「談志や歌丸さんのようなすごい人は、若い時からすごいけどね!」って。身もフタもないことを……。若者頑張れ!
収録は約2時間で終了。当初の予定よりもお客さんが多かったようで(抽選で決まった筈なんだけど……)、会場側が急遽パイプ椅子まで出して対応する程の盛況ぶりでした。みっちり落語を堪能した後、売店コーナーで横浜にぎわい座の特製手ぬぐいを買い、楽しく帰途についたのでした。
寄席ってしみじみ、楽しいもんだなぁ〜と感じました。東京には、大小限らず、寄席小屋がたくさんありますので、またぜひ足を運びたいと思います!
時代劇専門チャンネル「落語時代」放送日
今回収録の「落語時代」は、時代劇専門チャンネル で
- 8月17日(日)午後3時〜
- 9月5日(金)昼1時〜
放映予定です。テレビでもう一度見えるのがとても楽しみです。
にぎわい座の売店で売ってた、都こんぶ。懐かしさが寄席にピッタリ!酸っぱいけどおいしい日本の味です。